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饅頭のルーツを訪ねて(奈良) [只今出張中]

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今週は奈良でした。
寒さが身にこたえる天候でしたが、
お昼休みを利用して、奈良町あたりを散策してみます。

JR奈良駅から三条通り経て興福寺を目指します。
寺院の屋根を模した旧駅舎が古都らしさを盛り上げていました。

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三条通りを東へ、しばらく歩くと興福寺です。
猿沢池越しに見る五重塔は、おなじみの風景ですね。

池のほとりに采女神社という小さな祠がありました。
十世紀ころに書かれた「大和物語」に采女神社にまつわる伝承が載っています。
伝承を要約すると次のようになります。
昔、奈良帝に仕えた美しい采女がいた。
数多の公卿から求愛を受けたが、決して靡くことがなかった。
そのうち、帝が采女を一度寝所に召したが、二度と召すことがなかった。
これを悲しんだ采女は、猿沢池に身を投げてしまった。

『わぎもこがねくたれた髪を猿沢の池の玉藻と見るぞかなしき』(柿本人麻呂)
悲しんだ帝が猿沢池に行幸したとき、随行した人麻呂が詠んだと伝えられる歌です。
「わたしのいとしい采女の寝乱れた髪を、彼女が身投げした今となっては、まるで猿沢の池の藻と見なければならないことが、まことにかなしい」
が、歌意です。

今、「縁結び」と看板を掲げる神社となっていました。
人麻呂のように、池の藻から「ねくたれ髪」を想像しようと、池面を覗き込むも玉藻は見られませんでした。

采女:個人名ではありません。天皇や皇后の食事や身の回りの世話をする女官の官職名です。採用条件は三つあり、13歳以上30歳以下、郡少領以上の娘や姉妹の身分であること、容姿を厳選すること、となっています。采女神社の伝承では「美しい采女」となっていますが、采女だったら美しくて当然なのです。

 
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猿沢の池から南下すると奈良町です。
古い家並が続く一角となっていました。

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そんな街並み中に奈良漬の店がありました。
ここで昼食を摂りました。

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昼食に食べた「おつけもの御膳」です。
漬物でご飯が進みます。
二膳目はお茶漬でさらさらと掻き込み、仕上げとしました。
漬物はもちろん、西京漬けの焼き魚、野菜の煮物も美味しかった。

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三条通りから少し北に入ったところに饅頭の神様、「林神社」があります。
日本に饅頭を伝えた中国の人、林浄因を祭る神社です。

林浄因は、留学僧に付き添い来日しました。
中国の饅頭は、具に肉が入るので、肉食を禁じる僧侶たちは食べる事が出来ませんでした。
浄因は、小豆を煮詰め甘葛で甘味をほどこし、肉に替わる具とすることを考案します。
これが、日本における餡入りの饅頭の始祖となりました。
林家の家系は「塩瀬」の屋号で現在に至っています。

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林神社の近く、東向き商店街の饅頭屋「千代の舎竹村」は元禄年間創業の古い菓子屋です。
浄因が作った饅頭を今に伝えるといわれるのが、ここの奈良饅頭です。
味が落ちるのを避け、支店も卸も出さないのが、このお店の方針だそうです。
ですから、午後の仕事開始を気にしつつ、急いで買いに走りました。

昔の奈良饅頭には、林浄因の「林」の字の焼き印が押されていたそうです。
それが形骸化し、やがて無くなってしまったと言われます。
竹村の饅頭にはしっかりと林の字が押されていました。

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「和歌山の近大マグロを奈良で食う。」
午後の仕事をきっちりこなし、夜となりました。
地元のメンバーに案内された店で、近大マグロを初めて食べました。
赤身、中トロ、トロの三点盛り1400円は、お得感一杯の味でした。(写真です)

林神社の春の大祭では、全国の菓子業者から饅頭が奉納され、参拝者には紅白饅頭が配られます。
最近は参拝者が増えて整理券が必要なほどにぎやかなのだそうです。
そんな話を地元のメンバーから聞きました。

饅頭のルーツの旅は以上です。
そういえば、司馬遼太郎の初期の作品に林浄因に題材をとった「饅頭伝来記」がありましたね。
短編全集の第1巻に載っていたと思います。


司馬遼太郎短編全集 第1巻

司馬遼太郎短編全集 第1巻

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/04/10
  • メディア: 単行本

 

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