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塔ばかり見えて東寺は・・・(京都) [只今出張中]

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『塔ばかり見えて東寺は夏木立』
一茶の句です。
東寺のイメージをうまく表現した句だと思います。

東寺の五重塔が、列車の窓から見えると「あぁ、京都だ」と感じるのは私だけではないようです。
『新幹線で京都から大阪へむかう途中、左側に五重塔が黒々とそびえているのを見て、いつも私は京都を過ぎることを実感する』(五木寛之「百寺巡礼」)
司馬遼太郎(私の古寺巡礼)や梅原猛(京都発見七)も五重塔が見えると京都を実感すると書いています。
 
週の後半は京都に居ました。
ホテルが東寺の近くでしたので、早朝の散歩はもっぱら東寺界隈をうろうろすることになりました。

 
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東寺の南大門から金堂を望む光景です。
都の中央南北に朱雀大路が通じ、大路南端に羅城門が、
羅城門の東西に東寺、西寺の官寺が置かれたのが造営時の平安京の姿でした。

東寺の位置から考えると都の中心は現在の京都の姿より、西寄りであったようです。
河原町通りと並行する商店街の京極通りは、「極」の字で分かるように京の端でした。 
ですから、現在、商業街としてにぎわう四条河原町界隈は、文字どおり鴨川の川原で、都の圏外であったわけですね。
 
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当初、官寺として造営された東寺は、空海に与えられ、真言密教の修行道場となります。

南都における旧仏教勢力を抑えるのが桓武天皇の遷都の意図であったのでしょう。
最澄に比叡山を開かせ、空海に東寺を与え、新しい都を守護する仏教として援助しています。
東寺の正式名称「教王護国寺」がその事情を説明しているような気がします。
当時のそのような政治的背景が、宗教界においては、新勢力間での主導権争いに繋がっていたと思われます。 
 
西寺は守敏に与えられましたが、いつの時か廃寺となっています。
空海、守敏の神泉苑での請雨法の争いの話などは、宗派間の主導権争いを伝える逸話なのかもしれません。 

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東寺の伽藍は南大門を入ると、正面には金堂、その後ろに講堂と並び、南大門の右手に五重塔が配置されます。
金堂の本尊は薬師如来です。
真言宗では大日如来が本尊となりますが、官寺時代の名残を残しているのでしょうか。
実は、大日如来は講堂に安置されています。
大日如来を中心に左右に菩薩部、明王部の諸仏が並び、その周囲を守護神が護るという曼荼羅の世界を映しています。
数多くの像を配置して立体曼荼羅を構成することは、密教における曼荼羅の世界のイメージを分かり易く伝えるアイデアであったのでしょう。
残念ながら早朝のため拝観はかないませんでした。
空海プロデュースの曼荼羅界を、一度、見てみたいものです。

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修行の地から一転し、京都での一夜、先斗町をそぞろ歩きしました。
「ぽんと」はポルトガル後の「先」の意味であり、鴨川と鴨川を通船川として分流した高瀬川に挟まれ、
分流の分岐点に向かって先端をなす地形による名前であると聞いた覚えがあります。
幅一間にも満たないような路地を通って、元茶屋であったお店に入りました。
 
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船底天井の粋で、こじんまりした部屋で頂戴した、懐石料理の先付です。
あしらわれた紅葉、盛りつけられた料理の彩り、日本料理が目でも味わう料理だと、よく分かりました。
 
お酒は、洛中で造られる佐々木酒蔵の「佐々木」でした。
京都といえば伏見の酒という連想になりますが、洛中の水も良いのだそうです。
豆腐、湯葉、生麩など製造に水が大切な食品が有名なのもうなづけます。
 
以下はお店の人の説明です。 
佐々木は硬水の酒、伏見は軟水、佐々木の酒は男酒なのだそうです。
軟水を使えば硬度が低く、口当たりが柔らかとなり、それで伏見の酒を女酒と呼ぶそうです。
 
料理もお酒も楽しんで、そろそろ、おやすみの時間となりました。

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先斗町花街のシンボルマークは千鳥です。
小路の家々の軒先に提燈が吊るされています。
その提燈には千鳥が舞っていました。

千鳥舞う提燈に導かれ、千鳥足で帰路につきました。
 
百寺巡礼 第三巻 京都1 (講談社文庫)

百寺巡礼 第三巻 京都1 (講談社文庫)

  • 作者: 五木 寛之
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/14
  • メディア: 文庫
 

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