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鬼政はどこにいる(高知1) [只今出張中]

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高知へ行ってきました。
宿は「はりまや橋」の近くです。
そして、はりまや橋といえば、よさこい節の一節を連想します。

おかしなことやな
はりまや橋で
坊さんかんざし
買いよった
よさこい よさこい

「よさこい」の「よさ」は「夜」のことです。
「よさこい」は「今夜おいで」の意味なのだそうです。
恋情を読み込んだ歌詞が多いのも頷けます。

高知 078.jpg

 

はりまや橋でかんざしを買った坊さんというのは、高知市の東にある五台山竹林寺の僧侶純信です。
竹林寺は四国霊場第三十一番札所でもあります。
かんざしを贈られたのは、五台山下の鋳掛屋の娘お馬です。
安政2年5月、二人は駆け落ちをしました。
このとき純信37歳、お馬17歳であったといいます。
実在の人物なのですね。
恋は無事、成就したのかといいますと、惜しいことに讃岐金刀比羅宮参道の旅籠屋で捕吏に捕えられてしまいます。
二人は高知に連行され、城下でさらしものにされた後、純信は国外追放、お馬は高知城下から追放されてしまいました。

高知 098.jpg


8月のお祭りを控え、街のあちこちで踊りの練習をする人々が見られます。

さて、源信とお馬の話の続きです。
翌年、密かに土佐に戻った源信は再びお馬を連れ出そうとします。
残念ながら再び捕まりました。
二人は改めて追放処分を受けました。
その後、源信は愛媛県に居住し明治21年に亡くなっています。
お馬は須崎市の大工寺崎米之助と結婚、長男の上京に従って東京に移り住み明治26年に没しています。

よさこい節の歌詞の裏にこのような生々しい話があったとは知りませんでした。
しかし土佐人の自由奔放さが感じられる話ですね。

高知 029.jpg


はりまや橋からよさこい節と大分寄り道をしましたが、
今回、私の目的は高知の侠客鬼頭良之助の足跡を訪ねることです。

鬼頭良之助は宮尾登美子の小説「鬼龍院花子の生涯」の鬼龍院政五郎のモデルです。
裏街道を歩いた人物ですから観光案内書でも、歴史書にも出てきません。
小説の描写を頼りに鬼政が一家を構えた場所を探しました。
「魚市場のなかで規模の一番大きいのは、納屋掘に面していて荷揚げの便利な九反田上市場だが、この市場の南隣に鬼龍院政五郎が男稼業の看板を掲げたのは大正四年春のことである。界隈は皆、市場に関わった商いの店ばかり、鮮魚や海産物や、また関係者の用を満たすための雑貨、飯屋、風呂屋など軒を並べているなかに、通称鬼政の家は道を隔てて向かい合った二軒がそれで、看板のある東側を主家と呼び、主家の店の間には四枚引手の竜虎の襖と、正面には大きな振子の掛時計に並んで魔除けといわれる甲冑が飾られてあり、長押には入山形に鬼の字を書いた提灯箱がずらりとかけられてある。」

キーワードは「納屋堀」、「九反田上市場」です。
写真の円筒形の建物が九反田上市場の跡です。
市場跡は「かるぽーと」という公共施設となっていました。
前の道路が納屋掘だったようです。
堀も埋め立てられていました。
市場の南隣に一家を構えたと言いますからこの建物裏側にあたります。

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建物裏側に回ってみると九反田地蔵尊と表示がある小さな祠がありました。
石田光成の娘を供養する地蔵と境内の由緒書にあります。
境内の「百度石」に鬼政こと鬼頭良之助の足跡を見つけました。

高知 024.jpg


鬼頭良之助の寄贈によるものです。
百度石の裏面に名前が刻まれていました。
鬼頭が男稼業を張った建物は残っていませんでしたが、地蔵尊の境内でかすかな痕跡を見つけました。
さらに・・・・。

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灯篭に仲代達也の名前を見つけました。
仲代は五社英雄監督の映画で鬼龍院政五郎を演じています。

「わては高知の侠客鬼龍院政五郎の、鬼政の娘じゃき、なめたら、なめたらいかんぜよ」
映画の夏目雅子のせりふが頭をよぎりました。
「はちきん」は土佐女を形容する言葉です。
「大胆、決断、侠気」などの他に「至純、献身、精励、克己」などの意味を含むそうですが、映画の夏目は「はちきん」をうまく演じていたと思います。

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市内を流れる鏡川のほとりにフランク・チャンピオンの碑があります。
アメリカの飛行士です。
大正6年、高知での曲芸飛行ショー最中に墜落し亡くなっています。
この興業は鬼頭良之助が企画しています。
チャンピオンの死を悼んだ鬼頭が奔走し建てられた碑です。
帝国飛行協会会長であった大隈重信が碑文を寄せています。

宮尾の小説にこの興業話が出てきます。
「飛行機熱は上昇するばかり、鬼政にとって技はやはり手妻でなくてはならず、さらに高度の技術を求めて市との協賛でテキサス生まれの鳥人フランク・チャンピオンを招いたのは翌年秋のことであった。」

「子供たちのあいだではジャンケンの掛け声に、チャンピオンこけて、鬼政泣いた。というのが暫く流行り、聞いた子分たちは叱りもならず、犬猫でも追い払うように、「しっ、しっ。」と遠ざけるだけだったという。」

鬼龍院花子の生涯 (文春文庫)

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  • 作者: 宮尾 登美子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/03/10
  • メディア: 文庫


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