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冬の足音 [東京散策]

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先月(10月)の大伝馬町のべったら市の店頭です。
 
杉浦日向子の「大江戸美味草紙」の「冬の足音」の章はべったら漬の話で始まります。
先日のべったら市の頃は、冬の気分には未だほど遠い陽気でした。
何で「冬の足音」がべったら漬と、疑問を持ちつつ読み進むうち、はたと気づきました。
江戸は10月は10月でも、旧暦の10月なのです。 
うかつでした。
 
「江戸の冬は気合で乗り切る。その気合い初めの一歩がべったら漬だ。
これは、冬の洗礼儀式だから作法にやかましい。
べったら漬ひときれ頬張れば口いっぱいとなり、話しも出来ず、ひたすら無心に噛みくだくのを理想とした。」
杉浦日向子の文章は歯切れがよく、心地よく読めます。
「浅漬けをすなおに切って叱られる」と、古川柳の引用で始まる文章は、
「たくあん三切れが、べったら漬一切れの目安だったそうだ。浅漬は厚切りに限る」
で括られていました。
果たして、我が家のべったら漬の厚さはどうだったかと、思い返しています。

 
神楽坂 003.jpg
11月に入り、冬の足音を感じる日が、ここのところ多くなっています。
昨日からの雨もあがり、今日は少し陽気も良い日となりました。
江戸情緒を感じに神楽坂まで出掛けました。
「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」 
「粋でスタイリッシュな伝統文化との出会い・・・、江戸情緒に包まれて・・・」というコンセプトのイベント見物です。

結構楽しめたイベントでした。
なかでも、路地を流して歩く「新内流し」が良かったと思います。
三味線の音が、雨上がりのしっとりと濡れた路地に似合っていました。
 
 神楽坂 026.jpg
江戸情緒を感じました。
花街を流して歩く新内流し、三味線の響きが江戸へのタイムスリップを誘います。

 神楽坂 001.jpg
通りで見かけた、「新そば打ち始めました」の張り紙です。
 
「大江戸美味草紙」はべったら漬に新蕎麦の話が続きます。
「べったら市が過ぎれば、いよいよ新蕎麦の香りが乗る。蕎麦は中秋から獲れ出すものの、朝晩ビンと空気の張る、この時期に止めをを刺す。」
そうかもと思ってしまう文章ですね。
いちいち、頷けてしまうのも、杉浦日向子の文章力です。

こんな叙述もありました。
「江戸の蕎麦は、第一は「もり」。しかもその量は極端に少ない。五寸のセイロに、麺の輪を六つ盛る。それは蠅がくぐれるほどの隙間があり、ひと山、三、四本。六箸で食い終える勘定だが、なんの、ぐるっと箸を掻き回せば一枚一口だ。」
との文章に続いて、
「蕎麦は主食ではなく趣味食として独自の進化を遂げた。」
とありました。
趣味食と言うところが、すごいですね。
妙に納得しましたが、
同時に、先日山形で頂いた板蕎麦を思い出しました。
あれは主食でした。
お昼の蕎麦が、夜までお腹を満たしていました。
あれはあれで美味しかったのですが、趣味食の分量ではありませんでした。
 

大江戸美味草紙(むまそうし) (新潮文庫)

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  • 作者: 杉浦 日向子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/05/30
  • メディア: 文庫



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