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「江戸よ語れ」に語れられる [東京散策]

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資生堂発行の雑誌「花椿」に、
昔、連載された「にっぽん草紙」を纏めた「江戸よ語れ」という本があります。
偶然に見つけて読んでいます。
「江戸よ語れ」に語られぱっなしです。

そのうち「植木屋」の話は、西ヶ原が舞台です。
西ヶ原は、江戸時代、日光御成街道の道筋にあたり、今も一里塚が残っています。
道路の分離帯に、石碑とそれらしき樹木が残されています。
この少し先が、吉宗の桜で今も賑わう飛鳥山です。
江戸時代、巣鴨、染井、滝野川、そして西ヶ原は植木職人が集住する緑地帯でした。
そのような一帯に飛鳥山もあったのです。
王子あたりに狐がでるのも当たり前ですね。
 
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「植木屋」は、夫を亡くし子供と暮らす女家に強盗が入った・・・、ことから始まる話です。
『駒込にさしかかると緑が多くなってくる。
その手前が西ヶ原である。
花畑や苗木の林の中に、わらぶきの屋根が見えた。』
著者、海野弘の描写はなかなかのものです。
当時の巣鴨、染井から西ヶ原、滝野川に架けての風景が浮かぶようです。 
話は江戸町奉行であった根岸鎮衛の「耳袋」の「寡女死を免れし事」を題材に小説仕立ての小品にしてあります。
隠密廻り同心桜井俊平の謎解きが始まります。  
 
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所収の「縁切榎」は、中山道は板橋宿のはずれにある縁切榎を題材とした話です。
『板橋宿のはずれに縁切榎があった。
この木の下を通ると縁が切れるといわれ、花嫁はここを通ることを避けたが、縁を切りたいとこの木に願を掛ける人もいた』
はこの本の惹句ですが、
皇女和宮の行列もこの榎を迂回して通ったと伝えられています。
三行半(離縁状)を書けるのは、あくまでも夫であったのが江戸時代です。
ここに江戸の女の苦労があります。
縁切榎はそんな話です。

板橋 038.jpg 
 
中山道板橋宿とある石柱を眺めながら暫く歩み続けると、やがて縁切榎が見えてきます。

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『上郷から下谷を抜け、三ノ輪の辻を過ぎたあたりでであった。
このあたりで町屋が切れ、淋しい田んぼ道になる。
数人の武士が若者を取り囲んでいた。』
「手車売」は、手車(今のヨーヨー)売りと甲州の博徒祐天仙之助の出会いから始まります。

都電荒川線沿線 042.jpg
 
幕末、京都へ向かう浪士隊には、近藤勇一派も加わっていましたが、
祐天仙之助のような博徒も加わっていました。
日光街道千住宿へ、
女郎買いに向かう祐天仙之助と、
手車売りの若者の出会いは三ノ輪の辻あたりでした。
町屋の途切れた寂しいところ、との描写から、写真のような風景が浮かびます。
数人の武士に囲まれた手車売りの絶命の危機に、祐天親分がさっそうと現れます。
『それまでだ。刀を引け。もしひかないなら、市中見廻り、新徴組の山本仙之助が相手するぜ。』 
幕末の風雲を求めた群がり出る若者たちの風景です。
近藤一派は成功した方ですね。

海野弘というライターを知りませんでしたが、なかなかの筆力があるようで、つい引き込まれる読み物でした。
他にも江戸をモチーフとした作品があるようで探してみたいと思っています。


江戸よ語れ

江戸よ語れ

  • 作者: 海野 弘
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 単行本

 
 

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