向田邦子の「眠る盃」を読む [お菓子]
向田邦子のエッセイ集「眠る盃」を読んでいます。
荒城の月の「春高楼の花の宴、めぐる盃かげさして」の歌詞を
つい「眠る盃」と歌ってしまうという小文がエッセイ集の表題となっています。
さて、写真はそのエッセイ集に出てくるお菓子屋。
場所は南青山は骨董通り、菊屋という和菓子屋さんです。
二組も客が入ればいっぱいになるようなお店ですが、ショーケースには彩り豊かなお菓子が並んでいました。
千利休が残した文献をもとにつくられたという「利休ふやき」が有名です。
この日の目的はお彼岸の御供えを実家に送ることでした。
利休ふやきは口に入ることなく、宅急便の旅に出てしまいました。
店内の壁に、買い物をする向田邦子の写真が掲げられています。
向田邦子のエッセイで紹介されているお菓子は「水羊羹」です。
エッセイはで、水羊羹についての薀蓄を散々書いた後、文章の最後にさりげなく菊屋を紹介しています。
「粋な着物をゆったりと着た女主人が、特徴のあるハスキーな声で、行き届いた応対をしてくれます。」
応対は、エッセイ通りでした。
残念ながら、水羊羹は「新茶の出る頃から店にならび、うちわを仕舞う頃にはひっそりと姿を消す。」(エッセイより)ので、現在はありません。
代わりに買ってきたものはこれです。
おはぎです。お彼岸ですので・・・。
「八色おはぎ」と称して8種類のおはぎが並んでいました。
写真はそのうちの二つ、ゴマときな粉です。
その右は利休まんじゅう。
上品な味のおはぎでした。
利休まんじゅうはボリュームがありました。
向田がエッセイの中で書いていた「唐衣」はいろどりがきれいなお菓子でした。
季節により銘が異なり、今は「春の道」という名で店に出ています。
これは次のお楽しみに回しました。
向田には、他に「夜中の薔薇」というエッセイ集があります。
これも歌詞。
シューベルトの「童は見たり 野中の薔薇・・・」を「夜中の薔薇」と歌ってしまうのです。
表題作の「夜中の薔薇」もたっぷりとした余韻を含んで魅力的なエッセイです。
「夜中に童が見たのは、別の薔薇ではないかというのである。子供が見てはならぬ妖しいもの、という意味らしい。」
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